現在、最も使われており、一般の方が矯正治療をイメージすると思い浮かぶのが、歯の表側にワイヤーを使用して歯を動かす装置でしょう。
この装置はマルチブラケットといいます。英語ではBrace(ブレース)といいますが、日本ではブラケットといわれています。

この装置は歯の高さをコントロールしたり、歯に回転力を加えることができるので、今のところ、もっとも正確に歯を動かすことができる装置といえます。

この装置の原型は1926年、アメリカのE.H.アングルという歯科界でも歴史的に有名な先生が開発しました。
この装置の構造自体は、あまり変化していませんが、少しずつ改良され現在に至っています。

ブラケットの装置の設計に関しては、開発当初は、単にワイヤーを歯に固定するのみの設計でしたが、多くの正常な歯並びを調べることにより、自然な歯の傾斜角度や、前後の位置関係を組み込んだものになっています。

材質的な進歩も大きいです。
まずワイヤーですが、ステンレス・ワイヤーが主流でしたが、治療の初期段階では、歯に大きな力が加わってしまうため、形状記憶合金が使われるようになりました。
その結果、歯に加わる力が少なくなり、痛みが少ないだけでなく、歯の移動が早いとも言われています。

歯とブラケットの固定方法は、以前では歯に金属性のバンドを巻きつけ、歯とブラケットを固定していました。
1980年頃から、ブラケットを直接歯に接着する材料が普及し始め、バンドで歯にブラケットを固定する方法に代わって、直接歯にブラケットを接着するダイレクトボンディング法が開発されました。
このことは矯正装置を付ける作業が短くなっただけでなく、以前は前歯のほとんどの部分を金属で覆わなければなりませんでしたが、歯が見える部分が多くなったので、見た目の向上にもなりました。
実はこの接着剤を開発したのは日本人なのです。

ブラケットの材料に関しましては、1990年代までは金属のブラケットが主流でしたが、2000年を過ぎたあたりから、目立ちにくい白いブラケットが主流になってきました。特に近年の日本では金属の装置を見かけることの方が少なくなってきたように感じます。

装置の構造も進歩しています。
以前はブラケットにワイヤーを固定する際に、細いワイヤーで結び固定していましたが、近年では、ブラケットに開閉式の蓋が付いており、その蓋を開け閉めすることによって、ワイヤーを固定します。

日本人に合わせて目立ちにくい装置が多く開発されてきています。

強度の問題で、シャッターは金属で製作されていますが、金属そのものがブラケットについていると、金属特有のギラギラした感じだけでなく歯が黒く見えてしまうので、金属の部分にロジウムコーティングというメッキ処理がされています。

ロジウムコーティングした金属は、歯と同じように光を乱反射するために、歯の色調に合わせて目立ちにくいのです。

今後はロジウムコーティングしたワイヤーが、多く開発される予定なので、ワイヤーそのものも目立ちにくくなるでしょう。

欧米人や、日本近辺のアジア人に比べて、日本人は矯正装置が目立つことを極端に嫌がります。
日本の患者さんの要望は、本当に厳しく日本人特有なことと、日本での矯正製品が売れるマーケットとしては、諸外国と比べるとかなり小さいものなので、海外製品の多い矯正装置は、日本人の要望を受けることは少ないのです。

ブラケットだけでなく、多くの歯科矯正製品は、急激に進歩発展しているようです。
そのため、当院で使用している装置も、突然変更する場合もあります。
私も一人の日本人として、日本人のための日本製の矯正装置にこだわり続けるため、直接製造会社に意見を積極的に取り入れてもらえるように、勉強と努力を重ねていきたいと考えています。

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